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蝉の声が煩い。毎年当たり前のように、誰もがそう思うであろう時期。
もう少し学校に通えば夏の長期休暇に入れるというにもかかわらず、その「もう少し」が面倒だと感じるのは学生特有の悩みなのではないだろうか?
少なくとも、都会の喧騒から遠く離れた地域に住んでいる一人の女子高生、藍川 渚(あいかわなぎさ)はそうだった。
長期休暇まであと残り5日間となった1日目。週初めであり休日の翌日ということもあり、渚は仮病を使い学校をサボったのだ。
朝起きる時は本当に面倒だ、休んでしまいたいと切実に思っていたものの実際休んでしまうと段々行けばよかっただとか、勉強が遅れるだとか、そんな小さな罪悪感が生まれて来るのだ。
渚は親が仕事に行っていて自分一人しか家に居ないという事をいいことに、平日の昼間から先日の音楽番組をだらだらとテレビで見ていた。
テレビ画面には華やかな格好をしたアーティストやアイドル達が映し出されている。
『…はい、ありがとうございました。続いては…"shiny girls"の方々です』
そう司会者が言い、画面が女の子達に変わった途端、それまでソファでぐったりしていた渚が起き上った。
「で、でたあ!!!待ってました!!」
渚はこれでもかというくらいこの録画番組を見ているにもかかわらず、興奮した。
ポツリとそんな独り言をもらしてしまうまでに、渚は″shiny girls″が好きなのだ。
『今日は先週リリースした曲と、私たちのデビュー曲のメドレーを歌わせていただきます!』
『楽しみですね~ではスタンバイどうぞ!』
画面から女の子達が姿を消す中、今度は司会者と他のアーティストたちのトークが始まる。
渚は無論、shiny girls″の出番まで早送りした。
画面は煌びやかなステージを映し出し、【shiny girls/スペシャルメドレー】というテロップを出した。
それと同時に彼女たちの曲が始まり、渚は一瞬でうっとりとした顔になる。
渚はまた、独り言を零した。
「はあ…やっぱりいいな、shiny girls・・・」
そしてshiny girlsの出番が終わった後、曲目の最初に巻き戻すのであった。
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