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ゆうやは道端にキツネがいるのを見て、いたずらに石を投げた。投げた石は当たらなかったけれどキツネは驚いて車道に逃げ、車に轢かれてしまった。ゆうやは自分のせいだと思った。キツネを轢いてしまった車は逃げるように消えた。後に残されたのはゆうやと動かないキツネだけ。
「ごめんなさい」
ゆうやは泣いた。泣いて謝り、キツネを近くの林の隅に穴を掘り、埋めた。すくないおこづかいを使い、油揚げを買ってお供えした。皿も置いた。お線香も立ててできる限りの供養をした。
それからというもののゆうやはツイてなかった。自転車は盗まれるし、宿題をどこかに失くしたり、転んで怪我をしたり、悪いことばかりが起きた。そのたびにゆうやは何度も何度もキツネのところに行き、お線香を立て、すくないおこづかいで油揚げを買い、お供えした。
そんなツイていない日々が続いたある日のこと。
ゆうやは友達のそらと一緒に隣町まで買い物に行っていた。隣町で買い物を済ませ、駅のホームで帰りの汽車を待っていた。
「もし、そこの若いの、おぬしじゃ、おぬし」
ふいに声をかけられた。見るといかにも「占いしますよ」といった感じにイスと机を構えた得体の知れないおばあさんがいた。
「見るな」
そらの注意でゆうやはおばあさんを無視することにした。お金もあまり残っていないし、第一占いなどやったこともないのでゆうやもそらも無視することが一番だと思った。
「ほれ、おぬしじゃ、キツネの」
「……!」
ゆうやは飛び上がりそうになるのを抑え、ゆっくりとおばあさんを見た。
「ほうほう、よい顔をしておる。キツネに憑かれたとは思えんほどの顔つきじゃ」
ゆうやは「まさか」と思った。このおばあさんは自分にキツネが憑いていると言った。
「なんだよおばあさん。俺ら金ないぜ」
そらが言う。
「ははは。金などいりやせん。ただ注意をしておこうと思ってな。キツネの小僧よ」
ゆうやはきっとあの事故のことを言っているんだと思い、身構えた。
「夕方、西の方に行く際は気をつけよ。キツネが見ておるぞ」
ゆうやは何のことかわからなかった。しかしキツネが見ているということはわかった。
「変なばあさんだな」
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