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それでも、今日は平日。
このあとには仕事が待っている。
いつまでもこうしてはいられないのだ。
私は、涙を流すこともなく部屋に戻るとそのまま仕事に行く準備を始めた。
彼が何故いきなり別れようなんて思ったのか、私には全く分からない。
別に、仲は悪くないし喧嘩もしていない。
昨日だって電話でお休みを伝えた。
……五年も付き合っていたのに、肝心な部分は何も分かっていなかったのだと実感するのだった。
それから準備を終えると、少し時間は早かったけれどビニール傘片手に部屋を後にした。
*
パシャっ…
歩くたびに、地面の雨が跳ねて足元が濡れる。
いつもだったら最悪だとも思っていたのだろうけど、今日はそんな気分じゃ無かった。
むしろ、この雨が心地よく感じる。
ザー…
ザー…
バリ…
バリ…
ポタ…
ポタ…
ポ、タ…
「あ、れ…おかしいな…」
さっきは何とも無かったのに、自然と涙が溢れてくる。
「ちょ、化粧…落ちちゃうし…うっ…」
ポタポタ…
もう、歯止めが効かなかった。
一度気付いてしまった感情には勝てない。
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