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私だけに、見せてくれたその屈託のない表情。
嫌だ…嫌だ…、別れたくない。
今更遅いなんてこと分かってる。
きっと、メアドは既に変えられていて電話も着信拒否されているに違いない。
なんで、あの時引き留めなかったんだろう。
本当のことをきくのが怖かった?
…分かんない、分かんないよ。もう。
私の涙は、雨に混じって地面に落ちていった。
『好きです!付き合ってください!』
『ご、ごめん…こういうのよく分からなくて…』
『それ以上無理すんなよ!!マジで俺がどうかしそう…』
『愛してるよ』
『ずっと一緒にいような』
ずっと………。
嘘つき、バカ。
別れるくらいなら、最初からそんなこと言わないで欲しかった。
ずっと、だなんて……。
『辛い時は、無理に上を向こうとしなくて良いよ。下を向いてみな。そしたらとても綺麗なものに気付けるよ』
不意に、彼が昔言っていた言葉を思い出す。
下……、私はソッと顔を覆っている手を退けた。
ーー「あ…」
私の目に映ったのは、一つの花。
コンクリートの裂け目に、一生懸命咲いている。
今までに、たくさん人に踏まれてきたのだろう。
花びらはところどころ欠けているし、土などで汚れている。
だけど……
雨に打たれている、この花はとても美しかった。
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