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「ここですよ。聞こえているでしょう?」
はっきりと耳の側で声がした。春菜は驚いて横を見た。
「私は雪女です」
そこには手のひらに乗るくらいの小さな小さな女の子がいた。白い着物を着ていて、白い着物と同じくらい肌が白く美しかった。
春菜は現実感を失い声が出せなかった。
「いいんです。どうぞ、そのままで私の話を聞いてください」
雪女と名乗った女の子は丁寧にお辞儀をすると話をはじめた。
「私は雪女です。でもだからといって、今晩ここに泊めてくれませんか、なんていいませんよ。ふふふ。ただ夜更かししてるあなたと話がしたいだけです」
春菜は最初不思議でたまらなかったが、もしかしたらとてもリアルな夢なのかもしれないと思い、雪女と名乗る小さな女の子と話をすることにした。小さな雪女は無邪気な笑顔でよく笑うので春菜はだんだんと怖いとは思わなくなった。
「好きな子はいるの?」
雪女は春菜によく質問をしてきた。春菜はどうせ夢だろうからと、この小さな話し相手に正直に答えていった。遠慮のない、でもやさしい口調がなんだかお姉さんのようで安心できた。
「じゃあ、まだ話したこともないんだ。これからだね~」
雪女のやさしい口調に春菜はぼーっとしてきた。なにかもうたくさんの話をした気がする。家族のことや、好きな子のこと。習い事や学校のこと、進路のこと。将来の夢のこと……。
「そうそう、春菜はおとなしいからね……もっと積極的に…行かない、と…………」
何時間経っただろうか。もう雪女の声は春菜の耳に届かなくなっていった。
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