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それから長い年月が経った。
僕は高校を卒業し、就職した。
仕事が遅くなるときもあり、黒猫と会えない日もあったが、土日は必ず一緒にいた。
「そういえば、広小路の北側の教会にいる太った化け猫の話を覚えているか?」
「ああ。覚えているよ。宝があるんだろ」
「そうだ。これから確かめに行かないか?場所は知っている」
「ああ。面白そうだ。いいよ」
僕は黒猫の後ろについて行った。しばらくすると広小路に入った。
「北側の教会……、そこか」
「裏道がある。こっちだ」
教会の右手側に細い道があった。人が一人ぎりぎり通れるくらいの幅だった。陰になり薄暗い中を黒猫についていく。配管をかわしながら進み、しばらくすると開けた場所に出た。
四方に壁があり、空が切り取られていた。やんわりとした光に包まれた空間だった。
中央にソファがあり、人がいた。
妙齢の女性だ。
その女性の膝の上にでっぷりと太った猫がいる。その周りにも猫が何匹かいた。
「こんにちは」
しゃべったのは太った猫だった。
「ここは俺が」
黒猫が前に出る。
「お前がここのボスか」
「そうとも。タバコ屋の黒猫よ。私に何か用か」
「用はないさ。ただ確かめに来ただけだ」
「そうか。見た通り、宝などないだろう」
「そのようだ。また暇な時にでも来るよ」
黒猫はそれだけ言うとすぐに来た道を引き返した。僕は太った猫と女性を見て、すぐに黒猫の後ろについていった。広小路に戻る。
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