鬼力症候群

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「さあ、始めましょうか」 そう言った錠前の目は、薄い桃色に光っている。 「それでも世界は大きい、暴発したらどうする」 上ヶ原が助力する、と言い下ヶ原もそれに応える様に目を光らせた。錠前はただ頷く。 「私を忘れては困りますよ錠前さんっ、方向転換症候群、東西田南行きます!」 そう言って駆け寄る東西田、目には黄緑。 「投影を試してみる」 岩泉はそう、目を閉じた。血はもう出ていなかった。 俺はその光景を黙って見ていた。ただ、そこにいた。 以前患者として駆け込んで来た彼女達が、こんなにも成長していたのだ。 何も言えなかった。 「先生、焼き付けているかい。凄まじい光景だよ、これは」 レンタルが話し掛けて来る。焼き付けているかだと?当然だ。今見ないで、いつ見れるんだよ、こんな風景―――――。 そんな俺達を傍目に、ゴキリと音が聞こえた。
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