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「お母さん…」
戸惑うリン。
予想だにしていなかった受け入れがたい突然の別れ。
自分の生まれ育った家が遠く離れるほどに別れが現実味を増し、途端に喪失感に襲われていた。
そんな時、自分が出てきたドアが開いた。
見知らぬ男の後ろに見えるは先ほど別れを告げた愛する母。
拭ったはずの涙が溢れるのを止められなかった。
「はははは!泣いてやがる、可哀想になぁ?…おい!母親はここにいるぞ?」
そう言うとシーナの胸ぐらを掴み上げた。
「リ…ン!来てはダメよ…!あなたが捕まったらレンは…レンはどうするの!早く逃げ…」
「うるさいな。」
「ぐっ…!」
苦しさを耐えながら、出せるだけの声を振り絞り、リンを遠ざけようと必死に叫ぶ。
投げ飛ばされてもその眼差しはリンから離れることはなく、その姿はまさしく子を思う母の姿。しかし、その姿はリンには辛いものだった。
「お母さん…だって…だ…うえぇぇぇぇぇん!おかあさーん!!」
「くくく。そうだ、来い来い。」
泣きじゃくりながら走り出すリン。向かうは母の元。母を苦しめる男の元。
しかし、それをシーナは許さなかった。
「大地よ、我の声を訊け…【裂震】!」
詠唱直後、リンの目の前の地面が突然ビキビキと音を立てながら大きく裂け始めた。
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