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「え…?そ…んな…」
線を引かれた。こっちに来るな、と。
その線引きが訴えている。もう『戻れない』のだと。
頭では分かっている。分かっているんだ。
それでも、心は分かってくれはしなかった――。
「ほう…短縮詠唱が出来るとは、な。」
シーナの魔法に対して素直に感嘆する男。
しかし、その口振りから余裕すら感じられる。
「しかし、ふむ…もう1人居るのか…厄介だな。」
「あ…」
しまった。即座にそう思った。
レンの存在をみすみす教える形となってしまったことに後悔が押し寄せる。
「リン!」
こうなってはなりふり構っている場合ではない。
「お母さん…」
母を見る。
その瞳に力は無く、苛酷な現実を受け入れる前に心が壊れてしまいそうだった。
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