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世界最南端に位置する村、ミント。
なんの特徴もないが、自然豊かな森と山、水がきれいな川のある良い村であった。
「お母さん、お父さんはいつになったら帰ってくるの?」
僕はたまにこう言ってお母さんを困らせる。
そうすると決まってこうお母さんは言うんだ。
「そうね、レンがいい子にしていたら帰ってくるわよ。」
ほらね。
そして僕も決まってこう言うんだ。
「えー!お母さん、いつもそればっかり!いい子にしてても全然帰ってこないじゃん!」
「そうね、まだまだいい子にするのが足りないのかしら?ふふ。」
僕はお母さんのこの顔が好き。
柔らかくて、すこしおっとりとしてて甘えたくなるんだ。
だけどこの顔を見るために欠点もあるんだ。
「そんなのズルいや!またそう言って山菜採りに行かせようとするんでしょ?」
「あら、採りに行ってくれるの?お母さん、助かっちゃった。」
「うぅー!」
ほらね。
いつもこうやって行かされるんだ。これが大人が言う等価交換ってのなのかなー?
「ほらほら、あんたの負けみたいなんだから早く行きなさいよ。」
「姉ちゃん!嫌だよ!いつも僕ばっかり!」
リン姉ちゃんはいつも理不尽なんだ。
僕を虐めて楽しむヒドイ人なんだよ!
「いつも行ってるんだからいいじゃない、慣れてるでしょ?」
「いつも行ってるから嫌なんじゃんかー!」
「うるさいわね!こんなか弱い女の子に労働させる気なの?それでも男?」
「どこがか弱いんだよ…」
姉ちゃんに直接言うと怒られるから小声で抵抗してみたり…
「なんか言った?」
聞こえてたー!怖いよー!どこがか弱いんだよー!
「な、なんでも!?じ、じゃあ、僕行って来るね!」
もう!結局採りに行く羽目になっちゃったじゃん。
「暗くなる前には帰ってくるのよー?」
「はーい!」
お母さんの優しい言葉に背中を押されながら僕は家を出たんだ。
これが僕の日常、いつまでも続くと思っていた生活。だけどーー。
大好きなお母さんのあの顔を見ることが出来なくなるなんてこの時は考えもしていなかったんだ…
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