~第一章~

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涙を拭く。 いつまでも泣いていてはいけない。 しっかりしなければ。 「シーナさん?」 コンコンとドアを叩く音が響く。 シーナは鉄の仮面を被り、一世一代の演技を始めた。 「はいはい、なんでしょう?」 「あ、シーナさん、お留守かと思ったわ。あら、お子さんはいないの?」 「うちの子になにかご用ですか?あら、こちらの白い方はどちらさまです?」 隣家のおばさんに返事をしつつ、白ずくめの男に視線を送る。 異質な雰囲気を放つその男に警戒心を見抜かれてはいけない。 「村長が村中の子供を中央広場に集めて欲しいですって。なんでも子供にしか罹らない流行病があって、その検査をするみたいよ?この人は検査していただく人の1人ですって。」 その嘘が本当ならばどれだけ嬉しいことか。 しかし、そのような事態で空中戦艦は不自然過ぎる。 「そうなの?それは大変。でもうちの子、今隣町の親戚のお家にお世話になっているのよね。」 「あら、それで居ないのね。」 「ええ、だからまたの機会にしてもらうわ。」 「そうね、それじゃ…」 「ちょっと待て、そのコップは誰用だ?」 白ずくめの男はテーブル上にコップが2つ置いてある事に気付いた。 そして、家に足を踏み入れた。 「え…ちょっと勝手に入らないで。」 詰めを誤り、男の侵入を許してしまった。 「これは誰用のコップだ、と訊いている。」 コップを手に取り、再度尋ねる。 なにやら確信めいた不敵な笑みも浮かべている。 「それは…」 戸惑うシーナ。 早く何か言わなければ…何か言い訳を…。 しかし、頭が真っ白になってしまってなにも出てこない。 予想外の展開に頭が付いていけていなかった。
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