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あたしが働く特別養護老人ホームはその利用者のほとんどが“最期”をそこで迎える。
だからなのか、さ迷ってる老人たちは多い。
なぜ、この人たちは成仏しないんだろう……
いや、してくれないんだろう。
「若いものが、老人を無視なんてね。
しかもあんた介護しているんだろう?
……少しは年寄りを敬いなさい」
あたしははぁ、と溜め息をつくと答えた。
「分かった、分かりました。
仕事が終わったら話を聞きます。
今は……勘弁してください」
ほとんど口を動かさず言わなければならなかった。
あたしの周りには他の職員がいる。
独り言です、と言えばいいのだろうけどとにかくバレたくない、その一心だった。
「で、お話ってなんですか?」
仕事が終わり、使わない車椅子とか色々置いてある人目のあまりつかない倉庫にやってきたあたしは『その人』に話しかける。
「やっと来たわね。
うふふ、仕事忙しかったみたいね」
「……見てたんですか」
ーー『その人』は雰囲気、顔、話し方全てが優しさで溢れていた。
さっき、あたしに話しかけてきたときとの違和感を覚えるも話を先に聞くことにした。
ーー「私は10年前、ここで死んだの。
長男夫婦に入れられたのよ。
ボケてしまった私を長男夫婦は見捨てた。
歩き回って、何でも食べてしまう私に見切りをつけたのかしらね」
うふふ、と笑いながら話すもどこか寂しげな様子にあたしは言葉が出ずに、頷くことしか出来なかった。
でも、よくある話だった。
施設に入所させるだけさせて、面会にこない家族は多い。
“そっち側” の話は聞いたことはなかったけれど。
『その人』は話を続ける。
「それでね、ここに入ったのはいいけれど……
虐待されたの」
『その人』が語ったのは、信じられないような現実的ではない、真実の話だった。
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