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「虐待は日常的にあったの。
手を叩かれたり、暴言を言われたり。
くそばばぁ、しね!!なんて言われたりもしたのよ。
我慢するしかなかったの。
抵抗すればするほど、虐待は酷くなって職員に従うしかなかったのよ。
子供たちがたまに面会にくるでしょう?
そうしたら、優しくしてくれて。
それが嬉しかったの。
子供たちにも会えて、職員も優しくしてくれる。
大好きな時間だったわ。」
淡々と語るその話にあたしは、頷くことさえ忘れて聞き入っていた。
虐待、まさか本当にそんなことがあったなんて。
嘘かもしれないその話を、あたしは真実として自然と受け止めていた。
「そして、8年が経ったとき私はもう動くことも出来ないくらいになっていたの。
それからは早かったようね。
私は92歳で死んだわ。
あぁ、やっと開放された、って思ったのよ。
楽しくて嬉しい時間もあったのだけれどそれでも苦しい時間が多かった。
死んだら、楽になったのよ。
……私の身の上話はこれでお終いよ。
この話を踏まえて、お願いがあるの」
あたしは、ハッとした。
そうだ、この人はお願いがあるって言ってたんだ。
「な、なんですか?」
長い時間、言葉を発していなかっなあたしは少し、声が枯れていた。
「息子を、虐待から救ってほしいの」
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