5. 復活した幻

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「あっ」  澪は短く声を上げて、内ポケットから震える携帯電話を取り出した。背面のディスプレイを確認すると、顔をパッと輝かせ、折り畳まれた本体を手早く開いて耳に当てる。 「もしもし、誠一?」 「ちょっと、澪!」  隣の遥がハッとして振り向き、咎めるように名前を呼んだ。眉を寄せて非難の眼差しを向ける。そのことに澪も気づきはしたが、もう電話に出てしまっていたため、とりあえず誠一との会話を優先することにした。 『澪? 何かすごい音がしてるけど……』 「ごめん、いまちょっと移動中なの」  澪たちがいるのはヘリコプターの中である。エンジンやプロペラの回る音がうるさく、それが誠一の方にも届いているのだろう。澪も片耳を押さえないと誠一の声が聞き取れないくらいだ。 「遥も一緒にいるよ。替わろうか?」 『いや、それはいいよ……』  電話の向こうで誠一は苦笑していた。つられて澪も笑う。 「それで、どうしたの?」 『ああ……別に用はないんだけど、澪の声が聞きたくなってな』 「え、そういうの初めてじゃない? 私も誠一の声が聞けて嬉しいけど」  澪の顔は自然とほころんでいた。誠一と会えなくて気が滅入っていたが、声を聞けただけで、そんな寂しさもどこかに吹き飛んでしまう。そして、何より、彼も同じ気持ちでいてくれたことが嬉しかった。
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