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しかし、返ってきたのは思いもよらない答えだった。
「今回は返さん」
「えっ……?」
「これは報酬として私がもらい受ける」
「そんな! 話が違います!」
澪はバンと叩きつけるように両手をついて立ち上がり、剛三に強く抗議する。
「花さんのために取り返したはずですよね?!」
「そう目くじらを立てるな。悪いようにはせん」
剛三は真剣に取り合おうともせず、ただ愉快そうに笑いながら澪を宥める。しかし、そんな矛盾した言葉を信じられるはずがない。悪いようにしないというのは、彼自身にとってという意味でしかないように思えた。
それまで黙っていた遥が、小さく溜息をついて口を挟む。
「何か考えがあるのなら説明してくれない?」
「悠人、澪たちに説明してやってくれ」
剛三は含みのある笑顔でそう促すと、悠人は頷いてファイルを開く。
「澪、とりあえず座って」
穏やかだが有無を言わさぬ口調。
澪はひとまず指示どおり腰を下ろした。そして、疑いの拭いきれない眼差しを向けつつも、机の上で手を重ね、口を引き結んだまま悠人の説明に耳を傾けた。
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