6. 白い研究所

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「師匠、久しぶりなんだから、アドバイスくらいしてくれない?」  ジャージの膝についた土を払いながら、遥はぶっきらぼうにそう切り出した。澪も同意して大きく頷く。怪盗ファントムを始めるようになってから、悠人はその準備に時間を取られてしまうらしく、あまり澪たちの訓練に顔を出さなくなっていた。そして、昔のように自ら組み手をしてくれることもほとんどなくなっていた。だから、せめてアドバイスが欲しいと思うのは、弟子としては当然の心境だろう。 「そうだね……遥は劣勢になるとワンテンポ遅れることが多い。澪は攻撃がワンパターンになっている。つまり、遥は考えすぎ、澪は考えなさすぎってところかな。普段から数多くのパターンを訓練しておき、とっさに最適のものを選択できるようになれば理想だね」 「それ、このまえ言われたのと同じなんですけど」  澪はじとりとした視線を送って言い募った。一ヶ月ほど前にもらったアドバイスと、表現に違いはあるが、内容的にはまったく同じものだったのだ。適当にごまかそうとしているのか、忘れていたのかはわからないが、どちらにしても無責任なように思えた。しかし、彼は笑顔を崩すことなく反撃する。 「まずは指摘されたことを直してね」 「うっ……」  その至極もっともな正論には返す言葉もなく、澪は恨めしそうに口をとがらせて悠人を睨んだ。一方の遥は、両手を腰に当てて、諦めたように小さく溜息をついた。  昔からこういうことはよくあった。  悠人は、その穏やかな雰囲気とは裏腹に、本質をついた鋭いことを口にする。言われた二人は、カッと頭に血を上らせたり、悔しく思ったりしながらも、その感情をやる気へと昇華させるのだ。そうやって悠人が導いてくれたおかげで、種々の武術を身につけ、怪盗ファントムの動きをこなせるまでになったのである。
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