6. 白い研究所

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「二人とも今日の新聞は見た?」  悠人は思い出したようにそう言うと、後ろに置いてあった朝刊の一面を開いた。澪と遥は、それぞれ悠人の両隣に腰を下ろして覗き込む。そこには、ハンググライダーで目的地に向かう怪盗ファントムの写真が、カラーで大きく掲載されていた。 「わぁ、今回のはよく撮れてるね」 「また一面なんだ」  デビュー戦のあと、怪盗ファントムは立て続けに二つの案件を遂行した。両方とも一般的にはあまり知られていない絵画だったが、怪盗ファントムそのものが話題となり、大きくマスコミに取り上げられることとなったのである。ワイドショーでもコメンテーターたちがこぞって意見を述べていた。特に、過去の怪盗ファントムとの関係性は熱く論じられており、今のところ模倣犯と後継者で意見が二分しているようだった。 「ハンググライダーの操縦もすっかり板についてきたね」 「本当? 師匠にそう言ってもらえると嬉しい」  澪はそう言って無邪気に笑った。しかし、反対側に座る遥はムッと仏頂面を見せる。 「僕もハンググライダーの特訓がしたかったのに、どうして澪だけだったわけ?」 「さあ、どうしてかな。剛三さんの指示だから仕方ないよ」  その思わせぶりな答えを聞いて、澪はどきりとした。  --剛三さんは、僕と澪を結婚させたがってるみたいだけどね。  先日の悠人の言葉が脳裏によみがえる。それが本当かどうかはわからないが、剛三の指示を受け、悠人と二人きりで行動することは確かに多い。三日間のハンググライダー特訓も、花のところへ絵画を届けたのもそうである。他意はないのかもしれない。しかし、あんな話を聞いてしまったあとでは、どうしても疑念が湧き上がってしまう。
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