6. 白い研究所

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「まあ、バイクの練習も面白かったからいいけどね」 「そっちの方はどう? もう乗れるようになったの?」  雑念を振り払うように、澪は意識的に明るく声を弾ませた。  澪がハンググライダーの特訓をしていた三日間、遥は別の場所で大型バイクに乗る練習をしていたのだ。遥がハンググライダー特訓をうらやましがったのと同様、澪もバイク特訓をうらやましく思っていた。 「普通に乗る分には問題なし。曲芸はまだ無理だけど」 「じゃあ、今度はバイクで怪盗ファントム登場だね!」 「そんな予定はないよ」  つれない素振りで受け流す遥に、悠人はぽんと大きな手をのせた。 「遥がやってみたいのなら、剛三さんに進言してみるよ」 「別に、僕はどっちでもいいけど……」  胸中を見透かされて戸惑ったのか、遥は視線を泳がせてぼそりと言った。普段は年上相手でも臆することなく応酬する遥だが、師匠の前では子供のままなのかもしれない。澪はくすりと笑みをこぼした。 「じゃあ、僕はそろそろ行くよ」 「え、もう?」  立ち上がった悠人を目で追いながら、澪は尋ねる。 「剛三さんが寂しがるからね」  悠人はそう答えてにっこりと微笑んだ。まさか剛三が寂しがりはしないだろうが、このところ悠人と自室で朝食をとることが多いので、今日も彼の戻りを待っているのかもしれない。 「二人ともストレッチを忘れずにやること」 「はーい」  澪たちは軽く返事をして、芝生が短く刈りそろえられた庭に降りた。徐々にまぶしくなりつつある朝日を浴びながら、二人で運動後のストレッチを始める。その間、澪は奥に入っていく悠人を横目で捉え、見えなくなるまでずっとその背中を追っていた。
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