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「おまえたちの任期は20歳までの3年。獲物の選定や作戦の立案はこちらで行う。おまえたちは指示に従って作戦を遂行するのが役目だ。良いな?」
「いいわけありません! おじいさま、窃盗は犯罪です!!」
危うく流されそうになっていた澪は、ハッと身を乗り出して力説する。いくら祖父の命令とはいえ、犯罪に手を染めるわけにはいかない。祖父の間違った考えを改めさせなければならない。
「相変わらず澪は堅いのう」
「いくら不遇の絵画を救い出すためといっても、窃盗が許されるはずはありません。正当な手段で救い出すべきだわ。おじいさまなら、そのくらいのことが出来ないはずは……」
「面白そうじゃん、僕はやるよ」
必死になって説得する澪をよそに、遥はさらりと軽く了承した。
「はっ、遥?!」
「遥ならそう言ってくれると信じておったぞ」
剛三はほくほく顔でそう言いながら、何度も満足げに頷いていた。
澪は慌ててふたりの間に割って入る。
「遥、落ち着いてよく考えて。怪盗なんてやったら犯罪者になっちゃうのよ? 映画や漫画とは違うのよ? ヒーローでも正義の味方でもないんだから」
「わかってるよ。警察に通報する?」
その突き放したような物言いに、一瞬、澪はたじろいで小さく息を呑んだ。
「違うの、そういうことじゃなくて」
「澪はいいよ、僕ひとりでやるから」
「遥だけに押しつけて知らん顔なんて、そんなこと出来ないよ……」
消えゆくようにそう言うと、表情を沈ませて目を伏せた。遥が何を考えているかわからず、泣きたいような気持ちになる。だが、ここで諦めるわけにはいかない。
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