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「無理したんじゃない?」
「そういうことは聞くなよ」
きまり悪そうに苦笑する誠一を見て、澪は肩を竦めてペロッと舌を出した。
「貸して、つけてあげる」
誠一は箱からペンダントを取り出すと、澪の首に手をまわして留め、胸元のピンクダイヤの位置を直した。そのまま置いた手を引くことなく、ペンダントを、それから漆黒の瞳をじっと見つめる。
「よく似合ってる……澪……」
熱のこもった囁きを落とし、ゆっくりと澪に顔を近づけていく。
しかし、澪は立てた人差し指を彼の唇に当て、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「外ではダメって言ったでしょう?」
「そう、だったな」
誠一は傍目にもわかるくらい意気消沈し、ごまかし笑いを浮かべた。その様子が、澪には何かとても可愛らしく感じられた。くすっと笑うと、踵を上げて頬に軽く触れるだけのキスを落とす。それから、ゆっくりと彼の肩に額をつけて寄りかかり、小声でそっと甘えるように尋ねた。
「今度、いつゆっくり会える?」
「近いうちに……必ず」
誠一は力をこめて最後の一言を付け加えた。そして、目を細めてふっと微笑むと、少し冷えてきた澪の肩を、あたたかい手で優しく包み込むように抱いた。
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