0. 光の魔神

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 美咲は一応は素直に頷きつつも、もぞもぞと反論したそうな様子を見せていた。大地はそのことに気づいていたが、あえて無視して言葉を繋ぐ。 「それに、今晩はお楽しみもあるしね」 「お楽しみって?」 「それはまだ秘密」  美咲は口をとがらせた。 「じゃあ、船内を探検して、それからお昼寝じゃダメ?」  おねだりするようにそう言うと、漆黒の瞳をまっすぐに向けて、ちょこんと首を傾げて見せる。こんな顔をされては降伏せざるをえない。敵わないな、と大地は胸の内で密かに苦笑した。 「わかったよ」 「お兄ちゃん、ありがとう!」  美咲はパッと顔を輝かせると、ベッドに寝そべる大地に飛び込んで抱きついた。幸せな重みを感じながら、大地は彼女と目を見合わせ、絹糸のようななめらかな黒髪を指に絡めて慈しむ。  外では大きく汽笛が鳴り、ゆっくりと船が動き出した。
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