4人が本棚に入れています
本棚に追加
いきなりこんなコト言われでもピンとこないだろうけど、
明日は僕にとって特別な日なんだ。
だって明日になれば僕には羽が生えてきて、
何処でも好きなトコロヘ飛んでいけるようになるんだから。
・・嘘だと思うならキミにも立ち会ってもらうよ。
まあ明日といっても、あと2~30 分で日付が変わっちゃうから、
その特別な瞬間はもう間近に迫っているわけだけど。
そう、あとチョットで僕は1 0 歳の誕生日を迎えるんだ。
僕たちにとって1 0 歳の誕生日っていうのはスゴク特別な意味を持っているんだよ。
おかげで僕は体がウズウズしちゃってしょうがない。
これから起こるコトの一部始終を知っているわけじゃないんだけれど、
なんだかワクワクするような予感が体中を駆け巡ってるんだ。
9 歳と1 0 歳の境の夜、つまり、今この瞬間のことだけど、
僕は父さんと二人きりで豪華な食卓を囲んでいる。
とても食べきれない量の御馳走をたった二人で独占しちゃってるんだ。
でも、母さんは、こうすることが"ルール"なんだって言ってた。
僕と父さんが、特別な親子として特別な日を迎える為に、
母さんは特別豪華な舞台を用意しなくちゃならないんだって。
「すごく楽しみだなあ。
一体どんなコトが起こるんだろう・・」
「ふふ、じきに分かるさ、ぼうや」
「それに、さっきから体が変な感じなんだ。
僕、どうなっちゃうんだろう。
少し恐いよ、父さん」
「心配しなくていい。
ぼうやはオレの子供なんだから。
何も心配しなくていいんだ」
「・・・そうだね。
うん、わかったよ」
父さんの低く落ち着いた声になだめられると僕の不安は和らぐんだ。
心なしか僕を見守る父さんはいつになく上機嫌な雰囲気。
僕は胸の高ぶりを抑えつつ、母さんの用意してくれた料理に手をつける。
・・美味しい!やっぱり母さんの料理は最高だなあ。
いつもの僕ならこの時点で満足しちゃうところだろうね。
だけど、今日はそうはいかない。
何しろもうすぐ僕は1 0 歳になるんだ。
待ちに待ったこの日がついにやってきたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!