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その夜は家族会議が開かれた。議論はもちろん俺の高校のことについてだ。
「颯呀、お前はどう思ってるんだ?」
普段は威厳のない父さんが、今日はどこかの社長のようなオーラを醸し出している。
「俺は悪いことした覚えはねえよ。」
「そんなことを聴いているんじゃない。アビリティ学園に入学したいのかと聴いているんだ。」
父さんの鋭い言葉が胸に突き刺さる。
まだ俺はどうしたいのか決めていない。普通に進学校に入学して普通の大学、普通の会社へと計画をたてていた俺としては苦渋の選択だ。
進学してもアビリティを専門とする学校、進学しないと今後の人生は不安定なものになる。
「まだ…、わからない…。」
「そうか…。わかった、ゆっくり考えてお前の答えを見つけてみろ。」
部屋に戻った俺はベッドに寝転がり天井を見つめた。見慣れた天井に話しかけるように呟く。
「学校には行きてぇけど俺は…」
当然天井から返事は返ってこない。曇った俺の心には何でもいいから光が欲しかった。
「ん?これは…。」
部屋の扉の隙間から文字の群が入ってきた。
母のアビリティだ。母は文字を具現化できるアビリティを持っている。
このように扉の隙間を通り抜けられるように薄くしたり、硬く分厚くもできる。
空中に並んだ文章を読み上げた。
「私は颯呀に学校に行って欲しい。素敵な友達に出会って素敵な毎日を送って欲しい。あなたが嫌なら母さんは何も言わない。けど、あなたが学校に行きたいというなら私は全力で応援するわ。なんたって私はあなたのお母さんだからね。
……か。」
母さんには敵わない。そう心底痛感された。
読み上げたこっちが恥ずかしくなってくる。
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