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しかし、
「アンタさぁ…」
ヒリアの言葉で沈黙は破られた。その視線はまだ低いまま。
「なんで私に構ってくるの?私が無理矢理蒼学に入学させたのに、恨んでないの?」
今さらそんなことを聞かれてもなぁ…。そりゃあ最初は恨んでたし、今でもコイツの態度には腹が立つときもある。
でも、
「そりゃあ……お前がほっとけないから、かな?」
「はぁ!?」
夕日に顔を染めていたヒリアの顔がなぜか赤みを強めた。
「それってどうゆう意味…」
「意味って…そのまんまの意味だろ。」
友達が少なく、コミュニケーションのコの字すらなかった昔の自分とヒリアの姿が重なって見える。そのため彼女を独りにすると、昔の自分を見捨てているようで嫌な気分になるのだ。
「そ、そう……。」
なんかヒリアの様子が変だ。妙にそわそわしてる。明日は雨かもしれないな。
「そろそろ終わりみたいだな。」
観覧車は終点に近づこうとしていた。俺は立ち上がり、扉の近くにある手すりに手をかけた。
「まぁ、お前が昔の俺みたいにぼっちにならないよう俺がいくらでも協力してやるってことだ。」
「え……?」
ピタッとヒリアのそわそわが止まった。そして立ち上がり、次々と背後から黒いオーラを放ち始めた。
「ふ…、ふ……」
「ふ?」
聞き返した直後、
「ふざけるなぁぁあ!!!」
左頬にヒリアの硬い拳が直撃し、打合せしてたかのようにタイミングよく開いた扉の向こうに吹っ飛んだ。
やっぱり今日は俺にとって厄日に違いない。そう再認識した時にはもう堅いコンクリートに背を打ち付けていた。
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