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遡ること半年ほど前。
町には朝から活気が溢れている。
通勤、通学するサラリーマンや学生たち。車が行き交う音が耳に入っては通り抜ける。
俺が住む蒼斗市は、アビリティの発展が他の市よりは遥かに上である。
アビリティを用いた仕事がこの市に集中し、都市といっていいほど急成長した。
きっかけとしては、ヴァイス家といった大貴族が、何を思ってかこの市に引っ越してきたからだ。
するとヴァイス家のまわりに群がるように小貴族までこの市に越してきた。そのため、景気はよくなりアビリティについての研究も始められるようになった。
そんな地域の中心部とは少し離れたところに位置する俺の家を出発して数分。
中学三年だった俺はアビリティ専門校に進学する気は毛頭なく学校に通っていた。ちゃんとした理由はあるにはあるのだが、それは後ほど。
今日も見慣れた通学路を歩む。公園、病院、駅の前を通りすぎてゆく。
そしてここからが俺だけの秘密。駅を過ぎたところにあるパン屋の裏には学校に続く近道がある。
ビルとビルの隙間のため少し狭いが人一人通るには十分なスペースだ。だれも通らないのかゴミは一つも落ちてない。
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