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「だからさあ、矢沢の言動全てがうざったくて仕方ない……ねぇ、さっきから私の話、ちゃんと聴いてるの?」
かれこれ4時間。
博多で落ち合って東京行きの新幹線に乗ってからというもの、ずっと彼女の愚痴に付き合っている。
正直少し疲れてきていた。
「ああ、ごめん。その矢沢って奴がうざいんだよな?」
「ハァ……。」
彼女は溜息をついた。溜息をつきたいのはこっちだとでも言えば殴られそうな雰囲気だった。
「信じられない、アンタそれでも心理カウンセラーなの?それとも私の話は聴き飽きた?」
彼女は鼻を膨らます。
「まあまあ、落ち着けよ。お前も何時間も座りっぱなしで疲れたろう。東京までまだ長いんだ、少し目の一つでもつむったらどうだい。」
「結構よ、」
私が睡眠を促すと彼女はそっぽを向いて、座席のひじ掛けの下のボタンをカチャカチャやり、
アイスコーヒーとチョコレート菓子を二、三注文した。
きっと三分もすれば若い乗務員が笑顔を貼り付けて運んでくる。
ワゴンサービスは、利便性を追求され、数年前からこの大勢に切り替わった。
私は未だこのスタイルが気に入らない。その上今乗っている新幹線も完全廃止され、リニアモーターに全面移行するなんて法案も、この四月に可決された。
私が新幹線に乗るのもこれが最後かもしれない。
どこか、気に食わない。
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