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彼女が一息ついた様にボスっと椅子に座り直す。二十七歳のキャバ嬢。まだ肌にもツヤがあり、体もメリハリがある。
しかし、若かりし頃と比べればおとろえたものだ。私より一つ若いのに、どこか老け込んだ様な節がある。その彼女が生足で大股を開いて生欠伸をしている姿を見れば、彼女を取り巻く男たちもたちまちげんなりしてしまうだろう。
それとも、そんな有様にも性欲をそそられるのだろうか。
「お待たせしました、ご注文の品でございます。」乗務員がアイスコーヒーと駄菓子をトレイに乗せて持ってきた。
彼女は礼も言わず受け取る。
「それで矢沢がね……。」私はとうとう彼女を手で制した。
「もう黙っておけよ、君の為にならないぜ。」
「まぁアンタって人は。」彼女は溜息をついた。
「スクールカウンセラーが聞いて呆れる。子供の話じゃないと聴けないの?私の話も聴きなさいよ、このロリコン。」
「俺は君の先生じゃないよ、友達さ。しかも何時間もぶっ通しで機関銃のように男の話が出来る御転婆さんは、
そうそう居ないから。それにね……。」
私は少し言葉を切って、彼女のポッキーを一本つまんだ。
「身の上相談屋さんは当分の間お休みだよ。」
私は座席の下に潜んでいるボストンバッグを指差して言った。
「漫画家としてデビュー出来る事になった。」だからわざわざまた上京するんだ、言わなかったっけ?と続けると、
彼女は豆鉄砲を食った鳩の様になった。
「嘘でしょ。集英社で?」
「いや、あんまり有名じゃない小さいとこ。」
「負け犬。」
「うるせえや。」
彼女は負け犬負け犬、そら吠えてみなさいと楽しそうにふざける。
やはりひたすら愚痴愚痴しているより、笑っていた方が彼女は可愛い。
やはりどこか、花が咲いた様な美しさがある。
だから男も山程寄って来るのだろう。
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