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「ねぇ、疑問なんだけど、6年も離れている間にあなた達一度も会わなかったの?」
「はい」
「写真も?」
「はい。一度も」
それが春舞と僕の約束だったから。
「じゃあ、お互いがどんな風に変わっていったのか知らずに再会したのね」
「そうです」
まどか先輩は悲しそうに微笑む。
「お互いがお互いに理想を押し付けて、こんなものは違うと、現実ではない。と……それはとても悲しいことだわ」
まどか先輩の言葉は痛い。
僕の胸にぐさりと突き刺さる。
「見た目は重要よ。だって、七海が七海であることを決定付け、周りに七海だと認識させる」
まどか先輩は頬杖をつきながら、にっこり微笑むと言った。
「でも本当にそれだけなのかしら?七海が七海であることを決定付けているのは、外見だけ?春舞くんを好きな七海は、見た目が変わってしまったら、消えてしまうの?」
「違いますよ。見た目が変わってしまっても、僕は僕で、春舞は春舞だ。僕の気持ちは6年前も今も変わってない!」
そうだよ。見た目がどんなに変わってしまっても、春舞は春舞だ!
それに変わりはないし、僕の気持ちだって変わりはしないんだ。
今朝、春舞に言ったばかりじゃないか。
『僕は僕、春舞は春舞』
まどか先輩は、満足そうにニッコリ笑うと、止めていた手を動かし始める。
「でも、6年も会わないでよく平気でいられたわね。普通別れるわよ」
「別れませんよ!毎日電話だって、メールだってしてたんですから」
「ふぅん。まぁ、それだけ強い想いってことなのね」
そうだよ、春舞への想いは変わらない。
「まどか先輩ありがとうございました。きちんと春舞と話してみます」
「ふふっ。また悩み事があれば、いつでもどうぞ」
にっこりと背中を押すに笑うまどか先輩に、励まされた。
さっさと仕事終わらせて帰ろうっ!
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