七波遥斗の場合

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「考えてなかったです。自分の気持ちに必死になりすぎていて……でも、話がしたいと言っても春舞はきいてくれなかったんです」 「きっと、春舞くんの中でまだ気持ちの整理がついていなんじゃないかしら?七波のように簡単に気持ちの切り替えが出来ない人もいるのよ。まぁそこが七波の良いところでもあるんだけど」 にっこり笑うまどか先輩につられて、笑みがこぼれた。 「相手あってこその恋愛でしょう?自分の理想や気持ちを押し付けるだけじゃダメなのよ。時には焦らずゆっくり。ね」 「はい」 相手あってこその恋愛。 まさにその通りだ。 春舞は言ったんだ。 「まだ気持ちが追いつかない」って、だから待とう。 「今は一緒にいられない」って言って言ったのだって、「いたくない」じゃなくて、「いられない」だから。 「そういえば、春舞出て行っちゃったんですよね」 「えっ?」 「喧嘩したあと、出て行っちゃって、昨夜は帰ってこなかったんです」 「追いかけなかったの?!」 「追いかけようと思ったんですけど、足動かなくて、泣いたまま寝ちゃいまして……」 「おバカっ!」 げんこつされた。 今日はよく殴られる。 「痛いですよ、まどか先輩」 「ちょっと、七波!何で追いかけなかったのよ!それに、何で今っ!そんなに落ち着いてるの?!」 「だって、まどか先輩、焦らずゆっくりって言ったじゃないですか。それに、春舞は「今は一緒にいられない」って言ったんです。だからきっと……」 「このおバカさんっ!」 またもや、特大げんこつをくらった。 目から火花がでそう…… 「春舞くんは日本に帰ってきて間もないんでしょう?住む場所がなくて、七波の家に住んでるんでしょう?」 ハッとした。 そうだよ、春舞は行く宛なんかないんじゃないか? ーー 春舞は今一体どこで……っ 慌てて携帯に電話をかけてみたが、留守電につながってしまった。 「ちょっと、俺でてきますっ!」 まどか先輩の返事もきかずに僕は飛び出した。
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