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「はる、ま?」
「ハル?俺、今お前に」
「誰?」
「え?」
「その人誰?」
「ハル?」
うまく笑えない。
春馬の顔が見れない。
散る桜の花びらだけが視界を覆い尽くす。
今わかった気がした……
6年間一度も会わずに待っていられたのは、約束があったからだ。
春舞との約束があったから、待ってられた。
信じていたから……春舞を、お互いの気持ちを。
だから、今も待とうって、春舞の気持ちが落ち着くまで整理できるまで待とうって。
でも、もう待つのも意味がないのかもしれない。
「春舞」
「えっ?」
「僕はもう、待てないよ」
「ハルッ!」
もう待てない。
どうしようもなく涙が溢れた。
春舞が何を考えているのか分からないから、分かりたくないから。
もう、待つことはできない。
そのまま自宅に帰ると、寝室のベッドへダイブした。
そうして、そのまま意識は闇へと落ちていく。
意識が完全に落ちる前に浮かんだのは、悲しそうに笑う春馬だった。
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