七波遥斗の場合

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「大丈夫ですか?」 真っ黒な瞳が印象的な男の人が、心配そうに立っていた。 「あ、大丈夫です……ありがとうございます」 僕は慌てて涙と鼻水をふいて、立ち上がる。 僕より頭2つ分小さい男の人は、少し上目に僕をみつめて心配そうに声をかけてくれた。 「どうかしたんですか?」 「さっきの飛行機に乗ってるはずの人がいなくて……」 男の人はさみしそうに笑って言った。 「俺もなんです」 「え?」 「待っててくれるはずの人がいなくて……ね」 悲しそうに笑うその人に、僕の胸はぎゅっと締め付けられた。 あぁ、僕たちは同じ境遇だ…… ゲートから降りてくる人はもういないというのに、まだ春舞が来るんじゃないかと、笑いながら「ごめん」って言って、戻ってきてくれるんじゃないかと思ってしまう。 その場を離れることが出来なくて、近くのベンチへ座った。 声をかけてくれた男の人も、まだその場から離れることができないのか、僕の隣に座った。 お互いに深い溜め息をついて、顔を見合わせて笑う。 「僕の元に必ず帰ってくるって約束してくれたのに……」 「戻ってこなかったんですか?」 「……みたいですね」 また、泣きたくなってきた。 「俺は逆……待っててくれるって言っていたのに」 「待っててくれなかったんですか?」 「そうみたいだな……」 俺たちは、真逆の運命。 これが現実なのかどうかすら分からずに、ぼんやりと…… 最後に別れたときの春舞の言葉を思い出して、言葉が漏れた。 「「桜が咲く頃、必ず戻ると言ったのに……」」 「「えっ?!」」 重なった言葉に、お互いに驚いて顔を見合わせる。 ーー なに?どういうこと?! 男の人は、じっと僕の顔をみつめて、訝しげに眉を寄せた。
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