42人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫ですか?」
真っ黒な瞳が印象的な男の人が、心配そうに立っていた。
「あ、大丈夫です……ありがとうございます」
僕は慌てて涙と鼻水をふいて、立ち上がる。
僕より頭2つ分小さい男の人は、少し上目に僕をみつめて心配そうに声をかけてくれた。
「どうかしたんですか?」
「さっきの飛行機に乗ってるはずの人がいなくて……」
男の人はさみしそうに笑って言った。
「俺もなんです」
「え?」
「待っててくれるはずの人がいなくて……ね」
悲しそうに笑うその人に、僕の胸はぎゅっと締め付けられた。
あぁ、僕たちは同じ境遇だ……
ゲートから降りてくる人はもういないというのに、まだ春舞が来るんじゃないかと、笑いながら「ごめん」って言って、戻ってきてくれるんじゃないかと思ってしまう。
その場を離れることが出来なくて、近くのベンチへ座った。
声をかけてくれた男の人も、まだその場から離れることができないのか、僕の隣に座った。
お互いに深い溜め息をついて、顔を見合わせて笑う。
「僕の元に必ず帰ってくるって約束してくれたのに……」
「戻ってこなかったんですか?」
「……みたいですね」
また、泣きたくなってきた。
「俺は逆……待っててくれるって言っていたのに」
「待っててくれなかったんですか?」
「そうみたいだな……」
俺たちは、真逆の運命。
これが現実なのかどうかすら分からずに、ぼんやりと……
最後に別れたときの春舞の言葉を思い出して、言葉が漏れた。
「「桜が咲く頃、必ず戻ると言ったのに……」」
「「えっ?!」」
重なった言葉に、お互いに驚いて顔を見合わせる。
ーー なに?どういうこと?!
男の人は、じっと僕の顔をみつめて、訝しげに眉を寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!