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自分が"人間じゃない"というのを、造られてすぐに聞かされた。白衣を身にまとい、上から目線の男──渋谷という男に。
「素晴らしい。お前はなんて凄い力を持って生まれてきたんだ」
オレはこいつに、ただ力を奮い、戦いのためだけの道具として造られた事を知っている。もちろん、その事実を聞かされても、特に思う事は何もなかった。オレはその時、『感情』という物を持ち合わせていなかったのだから。
だが、感情というのがいったい何なのか、いまいちよくわからない日々が続いたある日、オレは初めて『高揚感』に近い、不思議な経験をした。
「ハハッ、なんだこれ……気持ちイイ……最高だ」
それは、初めて自分の力でハデスを倒した時。その時、自分の心が満たされるのを確かに感じた。あんな巨大な生物を、たった一人で、しかも自分の力のみで倒す……戦う時のあの高揚感が、オレはたまらなく好きになった。
それからというもの、その感情(味)を知ってしまったオレは、ひたすらハデスを倒し続けた。
最初は"倒す"だった。でも、気づけば次第に、それは"壊す"へと変わっていったんだ。
「ヒャハハハハ!! 壊れろ、壊れろッ!! 全部全部、壊れちまえッ!!!」
有り余った力を奮い、ハデスを壊す。壊す……壊す。日々力が増すにつれ、ハデスを倒すのにも時間がかからなくなり、気づけばオレは、一瞬でハデスを壊せるまでになっていた。小型だろうが中型だろうが大型だろうが、すべて一瞬で確殺。
そして、ついにはハデスだけでは物足りなくなり、オレに退屈が訪れた。
「──紹介しようゼロ。お前の新しい"玩具たち"だ」
そんな時、 渋谷はオレに五人の子供を用意した。オレとあまり年が変わらない子供を。そして、そいつら全員を殺してはいけないが、好きにしていいと渋谷は言った。
が、オレは少し驚いた。用意された五人の子供からなんと、どこか自分と似たような力を感じたからだ。
それが、『魔導力』だったのだ。渋谷はなんと、新たにオレと似たような力を持つ子供を造り上げていたのだ。オレはそれに対し純粋に興味が沸き、五人の子供に力比べを挑んだ。ハデスを壊す時みたく、いつものように……。
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