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「に、逃げようシロ! こいつヤバイよ!」
「う、うん! 殺される!」
「大丈夫か梓! こいつはヤバイ……次元が違い過ぎる。一旦退くぞッ!」
「ッ、わかったわ。確かに、異常ねアレは……何なの? あの力はいったい」
しかし、用意された玩具は、オレの期待を大きく裏切った。
「おい……なんだよ……なんで逃げんだよ……」
オレを畏怖の眼差しで見つめ、恐れるようにオレから逃げていく子供たち。
「クソっ……!! あぁクソッ!! つまらねぇッ!!!」
ハデスだけじゃあ物足りなく退屈してたってのに、期待してたコイツらもちっとも楽しくなかった。
ハデスよりはマシだったが、如何せん弱過ぎた。オレに敵わないと判断すると、五人のうち四人の子供は、恐怖に怯えるようにオレを見つめていたのを、オレは今でも覚えている。
所詮あいつらもハデスと同じで、戦ってもオレを満たしてくれない雑魚に過ぎないとオレは思った。──だが、それは"違った"。五人の中に、"一人だけ"いたのだ。オレを、少しは楽しませてくれるヤツが。
「…………」
そいつは女だった。黒く長いつやつやとした綺麗な黒髪。オレと同じような真っ白な肌。そしてくりっとした大きな瞳。
あどけなさはあるが、整った顔立ちをしたその女からは、あまり生気を感じられなかった。いや、活力を感じなかった。ただそこに存在するだけで、"空っぽ"という言葉がその女にはとても似合いそうだった。
もちろんコイツもアイツらと同じで、退屈しのぎにもならないカスだろうとあまり期待はしなかったが、この女だけは、"いい意味で"オレの期待を裏切ってくれた。
──オレは、すべてを無に還す。どんな力だろうと。だから、どいつもこいつも脆く、すぐに壊れる。崩れ落ちる。
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