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うっすらと涙を浮かべる梓に裕は微笑を浮かべて振り返りそう言い残すと、力尽きたのか地上へとまっ逆さまに落下していく。
「そ、そんな……裕ぅぅぅぅーーッ!!」
梓の悲痛な絶叫が辺りにこだまする。落下する裕に、梓はただ手を伸ばすだけで動けないでいた。
「あぁつまらねぇ……おい、泣いてねぇでお前もさっさとあいつを追いかけな。──ふんッ!!」
「きゃっ!? ぐっ……!」
動けないでいる梓にゼロは、なんと背中に強烈な蹴りを叩き込んだ。それをもろに受けた梓は、裕と同様わずかに遅れて地上へと落下していく。
「ハハハ、よかったなァ急いで追いかけられてよ」
「なっ、梓ぁぁぁーーッ!!」
情けない事にオレもその場から動けず、ただただ二人がやられるのを見てることしか出来なかったった。
しかし、梓は落下する途中、なんとか態勢を立て直して、地面に激突寸前だった裕を捕まえ二人一緒に地面へと降り立つ。
「けっ、つまらねぇ。双子の片方みたく、おとなしく地面に激突してりゃあいいものを─」
「この……ゼロォォォォーーーッ!!!」
「アァン?」
気づけばオレは、怒りに満ちた顔で青い光の尾を引きながら駆け出していた。
両手に握るCEに気合いで力を込める。力を振り絞ると身体が軋むが今はどうでもいい。青く光る光剣を構えながら、オレは全力でゼロに襲いかかる。
ふざけるな……絶対許さねぇ。てめぇのわがままでみんなが……仲間がこれ以上傷つけられるのはッ!!
「絶対に……許さねぇッ──!!!」
怒りのまま、ただ一直線に加速していく。
とにかく斬る。叩き斬る。それだけだッ!!
「うおおおぉぉぉーーー!!!」
「おいおい、てめぇーももうグロッキーなんだろ? さっきまでハデスの相手してたんだから」
「ハァ、ハァ、そんなの……関係ねぇ!!――うらぁッ!!」
ゼロがやれやれとため息をつくが、構わずオレは渾身の力で剣を振り抜く──しかし。
「まぁその威勢は買ってやる。が、生憎オレには"どんな攻撃も"通用しねぇ」
「なっ……え?」
ありえない。予期せぬ出来事が目の前で突然起きて、オレは動揺してその場で停止する。
なんと、叩きつけたはずの光剣がゼロの右手に鷲掴みにされ、掴まれたかと思えば、剣はそのまま光の粒子となって辺りにふわっと霧散してしまったのだ。
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