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ゼロの右手にはあの砂鉄のようなザラザラとした黒い魔導力がまとわりついているが……な、なんだこれは?
「ハッ、『わからねぇ』って顔してるなぁ新入り。だが安心しろ、ちゃんと"種明かし"はしてやる。とりあえずもう一度やってやっから、お前はまた剣で向かってきな」
「くっ……なら、一度と言わず、何度でもッ!!」
わけがわからず身動きが取れなかったが、ゼロの挑発を受けオレは大きくジャンプするようにして後退し、すぐさま突進をかける。
こいつがさっき何をしたかはわからないが、力尽きるまで何度だって──!
「くらえッ!!」
一切避ける素振りを見せず不敵に笑うゼロに、何の躊躇もなくオレは再び斬りかかる──しかし。
「なっ……また!?」
ゼロは魔導力をまとわせた右手でオレの剣を軽く振り払う。すると、剣はたちまち光の粒子となって辺りに霧散する。
「そんな……クソ!」
「あぁ~無駄無駄。何度やったって変わりゃしねぇーよ」
「ハァ、ハァ、うるせぇ! まだまだァッ!!」
消されても諦めず、剣を作り直しては何度でもオレはゼロへと斬りかかる。しかし、その度にゼロはただ退屈そうに右手を振り払うだけで、オレの剣を光の粒子へと変えてしまう。何度でも、何度でも。
「くっ……ハァ、ハァ、ハァ……いったい、どうして……」
そして、ついに限界だと、オレはぜぇぜぇと荒い息をしながら動きを止める。
残りわずかの力がさらにわずかとなり、空に浮いているだけでもやっとだ。
だが、だいぶ前に限界を感じてからも、何気にまだ空を飛んでいられるんだから、ある意味すごいのかもしれないけど……さすがにもう動けそうにない。
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