785人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハハ、ずいぶんグロッキーだなぁおい。だがまぁ、残りの力であそこまで動けりゃ上出来だ。褒めてやる。それに免じて、ちゃんと種明かししてやるよ。オレだけの『固有能力』を」
「ハァ、ハァ……固有……能力……?」
ゼロは息遣いの荒いオレを鼻で笑うと、自身が持つ力について話し始める。
「よく聞いとけ、新入り。オレはな……相手の魔導力を"無に還すことが出来る"んだ」
「はっ……? "無に還す"……だと?」
出てきたのは、そんな言葉だった。
「そうだ。オレは、相手の力を無に還すことが出来るんだ。何でそんな事が出来るのかオレ自身もよく知らねぇーが、力をつけていくうちに身についたんだ。で、この力は専用機持ちであるオレだけ──いや、この世界で"オレにしか出来ない"能力だ」
拳を握り、親指を自分に指して自慢げに語るゼロ。つまり、相手の魔導力を無に還すことが出来るから……。
「お前の能力にかかれば、魔導力で作り上げた武器なんて、意味を成さないと……」
だからオレの光剣は、いとも簡単に崩された……いや、無に還されたのか。それに、オレの魔導弾を手で振り払った時もまた然り。
「その通り。だからオレは、お前たち相手なら本来武器を作り上げて戦う必要もねぇ。オレにかかれば、お前らの武器なんかいつでも無に還せるからな。でもま、それじゃあつまらねぇーから、オレはこうして武器を具現化してるってわけだ」
と、ゼロはオレに見せるようにして再び黒い手刀を作り出す。
「だが、これでわかっただろ? オレは魔導力を無に還す……"ゼロへと還す"。故にオレは──『ゼロ』だ」
また不敵にゼロは笑う。そして、こいつの名前の由来は、本人が持つ特殊な能力に起因するものであったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!