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高校生というのはまったく大人になりきれなくて、ちょっとのことであせったり、幸せを感じたり、落ちこんだり、恋愛をしたりするものだ。
彼、鈴村も、ひそかに想いを寄せている同じクラスの女子に初めてあいさつ以外の言葉をかけられ、とても動揺していた。
白石「鈴村くん、忘れてたよ、ハイ」
鈴村「お……おう」
昼休みが終わり、図書室を出る時、室内に置き忘れていた教科書やらノートやらを持って追いかけてきたのは彼女、白石だった。
白石「それ、鈴村くんも読んでるんだね。
すっごい面白いよね!
じゃねっ」
鈴村「おう……」
届けてくれたものの中に1冊の文庫本がまぎれこんでいて、彼女がどこかうれしそうに話しかけてくれたのだけれど、彼はいきなりのことでうまい返事ができなかった。
多分、近くに置かれてでもいたから鈴村の物だとかん違いしたのだろう。
しかし、白石が“面白いよね”と言った本は、実は彼の友達の和木の持ち物だったのだ。
和木「なあ鈴村、お前、俺の本見なかった?」
教室へ帰ってゆく白石の後ろ姿を廊下で見送っていると、その和木が図書室から出てきた。
今さっき白石が鈴村にかけた言葉は、本当ならこいつに向けられるべき言葉だった。
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