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彼女は目立つというタイプではなかったが、図書委員にいそうな小柄でおかっぱの、子供っぽいかわいらしさがある女の子。
鈴村も目立つというタイプではなく、また飛び抜けてかっこいいとまでは言えないけれど、そこそこのルックスはある。
ただし、メガネ男子で文学少年の、制服のワイシャツが似合う和木には、残念ながら負けを認めざるを得ないのだった。
結論。
鈴村「たのむ、和木!
これ、オレにくれ!」
鈴村は相当に安易な考えで、その本を、もしくは彼女と話すきっかけをゆずってもらおうとした。
クラスメートでありながら、一学期もすでに終わろうとしているのに、気になる女子との接点が一つもなかったのだ。
そしてやっと見つけた接点が、“これ”だったのだから。
和木「おいおい、それは今、読んでる最中だ」
鈴村「そこを何とか……!」
和木「それに、これ4巻だぜ?
1巻から読まなきゃ、話分からねぇぞ」
鈴村「な……なにぃっ!?」
『ミミとマジョ』。
それがその本のタイトルだった。
最近発売された小説で、学校の図書室にあるわけもなく。
ゆえに、鈴村は友達からめぐんでもらうことをあきらめ、さっそくその日の学校帰りに近くの本屋へ駆けこんだのである。
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