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あの女の人が母親なのだろう。
よかった…。
ほっとしたあと、真中の車を降りた。
部屋に帰ると明かりはつけないまま、リビングのソファーに崩れるように埋もれた。
窓からの月明かりで、部屋全体が青い。
ふう、と長い息をついた。
いくらトラウマとはいえ、街中で目にするこういったことにいちいち気をうしなっているようではダメだ。
自分の弱さにあきれる。
真中と浩太郎の話を思い出す。
宗次郎が亡くなってから、真中は必要以上に紗那を甘やかしていた。
守られることが心地よくて完全に甘えていた。
紗那は両手で顔を覆った。
指の間から涙が溢れる。
自分は立ち直れたと思っていた。
悲しい出来事は消化できたと。
でもそれは見ないようにしていただけで、胸の奥にそれはちゃんと存在していた。
真中に甘えて、必死に顔を背けていただけだった。
しんとした部屋にメールの着信音が響いた。
送信者に浩太郎の名前を確認するとすぐそれを開く。
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