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紗那は質問に答えながら、タロウの後ろ姿を眺める。
手を引きながらも紗那の歩幅に合わせて歩いていた。
ジロウに関する質問責めに全然嫌な気がしないのは何故だろう。
ヘンな男。と、思う。
「サナは、痛くない?」
「え?…ん?」
今までジロウは~?の質問だったのがいきなり自分の質問にかわり、少し戸惑う。
見上げると、タロウは自分の胸をこぶしで2回、トントン叩いた。
「ここ。痛くない?」
ああ、ジロウのことで、か。
「痛くないよ、全然。むしろあったかい。」
「あったかい、か。じゃあ、よかった。」
ふと微笑むタロウ。
気付くともうすぐアパートというところだった。
「ここでいいよ、ありがとう。」
「ん、じゃあね。ちゃんと宿題して歯磨きして寝ろよ。」
「なにそれ。」
紗那は繋いでいた手を離し、その手をヒラヒラさせて歩き出した。
「ばいばい。」
ヘンな男。
アパートに向かって歩き出してすぐ、背中で声がした。
「サナ!!サナってどういう字!?」
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