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指輪をコンビニに捨てたのは"捨てる"ことに重い意味を持たせたくなかっただけだ。
そして"モノ"にすがるのも嫌だった。
一人になったとき、思い出のモノは全て処分したが、あのリングだけはずっと手元に残しておいた。
何度も押し寄せる悲しみと痛みと苦しみと…。
タロウには何もしなかった、と話したが、正確には
『何もできなかった――。』
時間が楽にしてくれた。
紗那はそう思った。
あのひとが望んだ通り、全ての"モノ"を処分し、紗那はあの日最後の約束を果たした。
そしてこれもあのひとが望んだ通り。
―――この先、紗那の人生で俺を思い出す事が一瞬でもあったなら、それは痛みを感じることなく、紗那の心が暖かくなるようなそんな想い出になりたい―――
だから、そうした。
私はもう泣かない。
私にできる精一杯…。
5年経って、やっと約束が果たせました。
紗那は少しの切なさを抱き、そっと目を閉じた。
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