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一旦正面玄関からオフィスを出ると一気に凍てつく空気がからだを襲う。
それでも冬の空気は空を澄み渡し、星が点々としていた。
オフィスビルの裏手にまわると駐車場がある。
この時間まばらに停まる数台のうち、黒いセダンの運転席に真中課長を見つける。
助手席のドアを開けるとほんのり辛口のタバコの匂いがした。
「すみません、待たせて。」
紗那の言葉に真中は目で合図してハンドルに手をかけた。
夜の街に滑り出すと、真中が口を開いた。
「飯でも食っていくか?」
「そうですね、そういえば私お昼食べるの忘れてました。」
今日は急ぎの書類作成が多く、紗那は昼休憩をとっていなかったことを思い出した。
「あ?お前これ以上痩せてどうすんだ。今日はおごってやるから死ぬほど食えよ。」
くすくす笑う紗那に真中は顔をしかめる。
「なんだよ?」
「いえ。じゃあご馳走になります。真中課長が昔と変わらないので可笑しくて…。」
今だ笑う紗那に真中は苦笑を返した。
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