2.幸せとの矛盾

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血の繋がりはないものの、紗那にとって6歳年上の真中は兄同然の存在だ。 実家が隣同士で、一人っ子の紗那は小さい頃から慕っていたのだ。 短大に入るために上京してからは疎遠になっていたが、偶然就職した会社で再会した時はお互い驚いたものだ。 しかも紗那の直属の上司だったこともあり、何かと面倒を見てくれる。 今日"は"奢る、なんて言い方をした真中を見てふと笑ってしまう。 今日"も"、の間違いだ。 車は一軒の創作料理のお店で止まった。 「先に入ってて。車駐車場に入れたら俺も行くから。」 紗那は頷くと車を降りた。 木でできた重厚な扉をあけると、少し薄暗い空間が現れた。 落ち着いたオレンジの照明が各テーブルに灯る。 真中課長が連れてきてくれるお店はいつもお洒落で、なのに気取らなく良いお店ばかりだ。 案内された奥のソファーに腰を沈めると、間もなく真中も迎え側のソファーにやってきた。 「紗那、何飲む?」 「あっちゃん車だから飲まないんでしょ?私も今日はアルコールはやめるよ。」 ソフトドリンクのメニューを手にしながら、紗那は、昔の話し方になっちゃったな、と思った。 が、それは真中も同じで、プライベートになると"杉浦"ではなく"紗那"と呼ぶ。
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