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「お前さー。何でそんな訳わかんない男についてくんだよ。」
紗那の話を聞き終えた真中は、呆れた顔で呟いた。
「だって図書館だし。実際何にもされなかったよ?」
「それは結果論。何かあったらお前にだって非があるって判断されんの。」
「それはそうかもだけどっ。でもタロウはそんな感じじゃなかったよ。」
「そんな感じってなんだよ。てかタロウって。そこからして胡散臭い。」
あの夜確かにヘンな男だと思ったが、否定的な真中を前にタロウを庇いたくなる心理が紗那にもわからなかった。
「もうっ。わかった。今度から気を付けるよ。」
タロウとの事がなんとなく幻想的に思えて、不思議な体験をした感じに捉えていた紗那は、この話を終わらせるべく言い放った。
そんな紗那に真中は呆れたため息をひとつついた。
「マジで俺の目の届かないところで無茶するなよ。助けられないのが一番辛い。」
真中の目には苦しそうな色が浮かんでいた。
昔のことを言っているんだろうとわかった紗那は、少し胸がツキンと痛んだ。
「ごめんなさい。宗ちゃんの時もいっぱい心配かけたもんね…。」
紗那の眉が八の字に下がる。
胸の前でぎゅっとこぶしを握った。
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