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グラスの氷がからん、と音をたてた。
「宗からもらった指輪捨てたんだな。」
真中は自分の手元を見つめながら小さく言った。
「うん。やっと約束守れた。」
悲しそうに微笑む紗那を見て、真中は複雑な思いを感じた。
紗那は、おそらくまだ完全には一人で歩き始めてはいない。
だが必死に立ち上がろうとしている紗那を見守ってやるのが、俺のすべき事。
それしかできない俺の役目。
「5年は…長いな。」
なんとなく思った事が口から滑り出した。
紗那は真中を見つめたまま頷いた。
「長かったね。」
紗那が自分で立ち上がる勇気を得るまでの時間だった。
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