104人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日の空は、キリリと凍てつく寒さに雪をキラキラと輝かせていた。
街灯に光る雪をぼんやりと見つめながら、紗那は昨夜と同じ道をたどる。
代わり映えのない帰宅路。
今日はコンビニに用はない。
眩しすぎる明かりが通りすぎるところだった。
「指輪をゴミ箱に捨てる女はじめて見た。」
紗那はいきなり思い当たるフシから振り返った。
「だれ?」
見ず知らずの男にそう話しかけられ、まあ当然怪訝な顔つきになる。
「昨日ここに指輪捨てたでしょ?」
何だか楽しそうに笑うその男は質問には答えず、紗那の行く手を遮る。
「それがどうしたの?」
多少面倒に感じながら目の前の男を見上げる。
身長160㎝ある紗那は自分でも小さくはないと思っているが、この男は見上げる程大きい。
おそらく180㎝近くあるだろうか。
スーツ姿が仕事帰りを思わせる。
栗色の柔らかそうな髪の毛がふわりと目の上で揺れている。
世の女子はこういう男を"イケメン"と呼ぶのかもしれない。
「変な女だと思ったから声かけてみた。」
相変わらず楽しそうにそう言った。
あまりかかわりたくない種類の人間だと判断し、再び歩き出そうと身を返す。
「サナ。」
突然名前を呼ばれる。
最初のコメントを投稿しよう!