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「いや、捨てる意味はわかるんだけど、コンビニはないっしょ。普通女の子って男に返したり、海に投げたりとかじゃないの?」
やっとおさまったタロウは目のはしに残る涙をぬぐっている。
「海って…。間違えて魚が食べちゃったりしたら可哀想でしょうが。」
紗那の言葉にタロウの目がみるみる丸くなる。
「なに、そのメルヘン思想…」
じわじわと笑いはじめるタロウに慌てた紗那は、両手でタロウの口を塞ぐ。
「これ以上騒いだら私知らないフリして帰るからっ」
紗那の睨みにわかったわかったと言って、タロウは顔を背けた。
小刻みに揺れる肩。
「ちょっとタロウのくせに笑いすぎ。」
立ち上がった紗那は本棚をふらふらと眺めながら、一番壁際の恋愛小説が並ぶあたりで足を止めた。
壁の小さな窓から空を見上げると、先ほどの雪はもうやんでいて月が半分顔を出している。
指輪をくれたひとをふと思い出したけれど、ひどく落ち込むことはなかった。
「なんていうひと?」
いつのまにか隣に立っていたタロウは壁に背を預け、腕を組みながら紗那を見ていた。
「なにが?」
月明かりがほんのりタロウを照らす。
キレイだな、と思った。
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