scene1 Still

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白いベッドで、あなたは静かに眠っていた。 昨日まであなたをベッドに縛りつけていた線や管は、今は一本もない。 いつものように、あなたの胸に頬を預け、目を閉じる。 『トク…トク…トク…』 いつもなら聞こえる規則正しい鼓動。 あなたは大抵、私の気配に目を覚まし、私の髪を撫で、背に触れる。 『また夜這いかぁ? たまには面会時間内に来る気になんない?』 そう言って呆れたように笑う。 私は顔を上げて、あなたと視線を合わせる。 『夜のほうが、恋人の秘め事っぽくて、いいでしょ?』 ちょっと色っぽく唇を寄せて囁き、そのままあなたに触れるだけのキスを落とす。 あなたは拒まない。 でも決してそれ以上を求めない。 『せっかくの個室なのに』 そう私がねだっても、ただ 『ばーか』 と薄く笑うだけ。 でも一度だけ、いつだっただろう。 私のうなじに触れるあなたの指に力が込められ、強く引き寄せられて、貪るような口づけを交わした。 唇を離し、腕をほどいたあなたは私を見つめ、すぐに顔を背けて、ぶっきらぼうに言い捨てた。 『帰れ。もう来るな』 そのくせ、翌日おそるおそる顔を出した私に、何もなかったかのように、 『よう』 と笑った。 鼓動はもう聞こえない。 合わせた唇は、硬く冷たかった。 もう、何も返っては来ない。 寄り添えば寄り添うほど、私の体温だけが奪われて行く。 そうして過ごしたその夜は、闇の中に引きずり込まれそうな、初めての孤独な時間だった。
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