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【あとがき】
のっけからこんな選曲ですみません。
亡くなった恋人を追慕する名曲は数ありますが、たいていはバラードですよね。
この曲は、ちょっと切ないメロディーラインではありますが、ビートの効いたミディアムテンポ。
Tinaさんのソウルフルでグルーヴ感溢れる力強い歌声と相まって、曲だけ聴いていたら、おそらく『愛しい人の死』を歌った曲だとは思えないでしょう。
曲を聴く時私は、メロディーラインや全体の雰囲気を優先して楽しむほうで、実はあまり歌詞を気にしていません。
そうやって聞き流すように聴いて、気に入ったら初めて歌詞を見る、って感じで。
だからたいていの場合歌詞は、よっぽど印象的なフレーズの記憶くらいしかありません。
この曲もしばらくは『別れてもずっと心にいるひと』くらいの雰囲気で捉えていました。
ところがある時、ふっ、と耳に入ってきた歌詞。
『旅立つ、煙になるあなたは♪……』
……えっ!?
歌詞に驚愕したのは初めてでした。
『死』も『悲しい』も『寂しい』も、歌詞には一言も出て来ない。
感情的な言葉や、思い出話などはまったくなく、ただ淡々と綴られる事実。
それでいて伝わってくる切なさと。
でもどこかで、過去にのみ囚われるネガティブさを吹っ切っている、強さと。
それらが、『どっぷり悲劇のヒロイン』的な泥臭さを、遠いものにしています。
大好きな曲のひとつです。
物語はそういうふうに書きたいと、そう思っています。
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