第9話

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「この先はここじゃ流石に…」 頭が真っ白な私を他所に、二人の会話は続いていく。 千華さんは立ち上がって鞄を肩にかけた。 「分かった。事務所…は、今日は母さんがいる日だな」 「じゃあバイトが終わった後に…事務所で話す」 「分かった」 そうして、要と千華さんは少し空いた距離を保ちながら、二人でカフェを出ていった。 「……かな…め…?」 やっと出た声。でももう名前の主はいない。 「…キ……ス…って…なに?」 溢れるのは言葉より涙。 「どうしたの?」 カフェの店員さんにそう声を掛けられ、私はハッとした。そして「何でもないです」と早口に答え、私は来た道を走って引き返した。
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