8139人が本棚に入れています
本棚に追加
「この先はここじゃ流石に…」
頭が真っ白な私を他所に、二人の会話は続いていく。
千華さんは立ち上がって鞄を肩にかけた。
「分かった。事務所…は、今日は母さんがいる日だな」
「じゃあバイトが終わった後に…事務所で話す」
「分かった」
そうして、要と千華さんは少し空いた距離を保ちながら、二人でカフェを出ていった。
「……かな…め…?」
やっと出た声。でももう名前の主はいない。
「…キ……ス…って…なに?」
溢れるのは言葉より涙。
「どうしたの?」
カフェの店員さんにそう声を掛けられ、私はハッとした。そして「何でもないです」と早口に答え、私は来た道を走って引き返した。
最初のコメントを投稿しよう!